骨がもろくなり、骨折リスクが高くなる疾患
骨粗しょう症は、骨の量が減少し、鬆(す)が入ったように骨に空洞ができ、もろくなって骨折する可能性が高くなる疾患です。
骨に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラル量は、20~30歳頃の若年期をピークに、年を重ねるとともに減少し、骨密度が低下します。
骨密度が減少をきたすことによって骨粗しょう症と言われる状態になり、背骨が体の重みでつぶれたり、背中が曲がったり、変形による圧迫骨折をきたしたり、ちょっとした転倒で骨折するといった事態を引き起こしがちになります。
骨密度が減少する原因として、加齢に伴う老化、閉経に伴う性ホルモンの低下、栄養や生活様式などの環境因子、特定の疾患や薬物治療により発症するものなど様々です。
我が国においては、人口の急速な高齢化に伴い骨粗しょう症の患者さんは年々増加しつつあり、現時点では約1300万人の患者さんがいると推測されています。その対策は医療のみならず、社会的にも重要な課題です。
女性に多い骨粗しょう症
骨粗しょう症は、高齢の女性を中心に、年々増加する傾向にあります。
骨粗しょう症患者の約8割を女性が占めており、特に女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下する更年期以降に多く見られます。
エストロゲンには、骨の新陳代謝に際して骨吸収を緩やかにし、骨からカルシウムが溶け出すのを抑制する働きがあります。
閉経して、このエストロゲンの分泌量が減少してきますと、骨がもろくなってしまいます。
そのため、閉経を迎える年齢から骨量は急激に減少します。
閉経される50歳前後になる前に一度、骨粗しょう症の精密検査を受けるよう、お勧めいたします。
一方では、偏食や極端なダイエット、喫煙や過度の飲酒なども骨粗しょう症の原因と考えられており、最近では高齢の女性だけでなく、若い女性の骨粗しょう症も問題視されています。
骨粗しょう症の検査
骨粗しょう症の診断には、骨密度の測定が重要となります。
骨密度の測定
骨の強さを判定する際の重要な尺度の1つに"骨密度"があります。
当クリニックでは、大腿骨近位部、腰椎のX線撮影から骨密度を測定するDXA(DEXA)法による骨密度の測定を行っております。
特に大腿骨近位部の骨密度は、あらゆる骨折の予知能に優れており、測定が重要となります。
骨粗しょう症の予防と治療
骨粗しょう症の原因のうち、年齢や性別、遺伝的な体質などは対策が困難です。
しかし変えることのできる要素、つまり食生活や運動などの生活習慣を見直すことにより、予防と改善が可能です。
食事療法
骨粗しょう症の治療に必要な栄養素は、骨の主成分であるカルシウムやたんぱく質、およびビタミンD・Kなどです。
カルシウムは食品として700~800mg/日、ビタミンDは10~20μg/日、ビタミンKは250~300μg/日を摂取することが推奨されています。
これらの栄養素を意識しつつ、バランスの良い食生活を送ることが大切です。
骨粗しょう症の人が避けるべき食品は特にありませんが、カフェイン、アルコールなどの摂り過ぎには注意しましょう。
過ぎた量のアルコール摂取は、カルシウムの吸収を妨げたり、尿からのカルシウムの排泄量を増やしたりします。
カフェインもまた、カルシウムの排泄を促し、骨密度の減少を招きます。
カルシウムを多く含む食品 | 牛乳、乳製品、小魚、野菜類(小松菜、チンゲン菜等) |
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ビタミンDを多く含む食品 | 魚類(いわし、紅鮭、さんま)、きのこ類(きくらげ等) |
ビタミンKを多く含む食品 | 納豆、厚揚げ、わかめ、ほうれん草、小松菜、にら等 |
運動療法
骨は、運動をして負荷をかけることで増え、丈夫になります。
さらに、筋肉を鍛えることで体をしっかり支えられるようになり、バランス感覚が良好になり、ふらつきが少なくなって転倒防止にもつながります。
運動療法は骨粗しょう症の治療に不可決です。
骨量を増やすには、ウォーキングやエアロビクスなどの運動が効果的で、激しい運動をする必要はありません。
散歩などは可能なら毎日、あるいは週に数回でも十分ですが、継続することが重要です。
薬物療法
病状が進んだケースでは、食事療法や運動療法に併せて薬物療法を開始します。
現在、使われている薬には、骨の吸収を抑える「骨吸収抑制剤」、骨の形成(新しい骨を作る)を助ける「骨形成促進剤」、骨の栄養素である各種ビタミン(D、K)剤などがあります。
また、腰や背中などに痛みがある場合は、痛みを取る薬も用いられます。
どんな薬を選び、いつから治療を開始するかかについては、個々の患者さんの年齢や症状の進み具合などを考え合わせながら、医師が判断します。